Sea Shore Stained Glass

2022.08.26Column

処暑  (地材)

雷雨が続き畑の水やりを少しサボれる頃、秋の気配も少し感じられます。太平洋上にどんと居座っていた高気圧も少しずつですが勢力を弱め、南海上では、低気圧のタマゴが渦渦と産声を上げてきそう。うねりを期待する僕らにとって楽しみではあるものの、災害の危険もまた懸念されます。皆様もどうぞ備えを大切にしてください。

今年も風蘭が咲きました。和蘭の可憐さと優しい香りの虜。
この花が枯れる頃、夏の陽気も和らぐことでしょう。

先日、島南にある老舗材木屋に行ってきました。

ここ奄美はスダジイを主とした原生林にほぼ囲まれています。これほどまでに手付かずの山々が存在していること事態がとても珍しいのですが、それでも人々は嘗て山に入り樹齢のある木々を切り出しては製材していたようです。

十年一昔。

自然は豊かで手間を重んじる時代。里山から切り出したその土地の無垢材を使う建築。
昔の手仕事の大変さとそこに価値を置き職人の知識と技術を持って丁寧に形にしていく生き様。

切り倒した後も精を感じる木材たちはその個性の強さからか、どうにも現代の効率のみを求めた建築には合わないらしく、接着剤で固めた集成材や新建材、もしくは強制乾燥により精気を吸い取られた外材が今の主役です。

そんな時代に対応出来なくなった木材屋や製材所は徐々に姿を消すとともに奄美大島の自材を手に入れることはかなり困難になりました。
僕が知る中で島で最後の自材を扱う木材製作所も、とうとう時代の流れに逆らえず工場を閉鎖します。

琉球松・椎木・楠 埃まみれの倉庫からできる限りの木材をいただいてきました。
僕にとってはとても価値のある生きた素材を手に入れたことはとても喜ばしいことですけど、時代の流れの中で,良いなと思っていた文化がまた一つ失われていくことはとても悲しく複雑な思いです。

 

h.k